Tohoku University, International Center for Synchrotron Radiation Innovation Smart (SRIS)

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【受賞情報】南後恵理子教授が第41回井上学術賞を受賞お知らせ

2024.12.18
生命分光計測スマートラボの南後恵理子教授が第41回(2024年度)井上学術賞を受賞しました。
この賞は自然科学の基礎的研究で特に顕著な業績をあげた研究者に授与されるものです。
 
 
研究題目
光感受性タンパク質の動的構造と分子機構解明
Dynamic structures and molecular mechanisms of photoactive proteins
 
 
授賞理由
すべての生物の生命活動を支える基本分子であるタンパク質がいかにして各々の機能を発揮するのか、その仕組みは謎に包まれている。多くのタンパク質は、機能を発揮する際にその構造を変化させるが、短時間に起こる構造変化を高い分解能で捉えることは大変困難である。近年、それを観測する新しい技術として、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いたシリアルフェムト秒構造解析(SFX)が発展してきた。SFXは、微小な単結晶のストリームにXFELの高輝度パルスを照射することで、各単結晶からの回折像を連続的に収集する手法で、放射線損傷の影響を受けずにタンパク質の内部構造を明らかにすることができる。南後氏は、日本のXFEL施設であるSACLAにおいて、SFXの技術開発を牽引し、黎明期の技術の実用化と測定基盤の構築において中心的な役割を果たした。
南後氏は、この技術を光駆動型プロトンポンプであるバクテリオロドプシンに適用し、光刺激後ごく短時間(フェムト秒からミリ秒)の間に起こる構造変化を原子分解能で克明に明らかにし、「分子動画」として観測することに成功した。これにより、長年の謎であったバクテリオロドプシンによるプロトン輸送機構が初めて明らかになった。さらに、この技術を適用し、他の多くの光応答性タンパク質の機能メカニズムの解明にも貢献した。このように、SFXを用いてタンパク質の機能メカニズムの解明をはじめて実現し、新たな研究領域の開拓に大きく寄与した。
南後氏は、国内の研究コンソーシアムで中心的な役割を担うだけでなく、国内外のXFELユーザーを支援し、技術の普及にも尽力してきた。さらに、温度ジャンプ法など新技術の開発にも取り組み、この分野を先導する研究を展開している。このように、XFELを基盤とするタンパク質の動態研究の発展において極めて重要な役割を果たしている。
以上のように、南後氏は、画期的な解析技術の実用化・発展を先導し、それを用いて最先端の構造生物学研究を推進してきており、井上学術賞の授賞に相応しいと判断された。
 
 
 
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