研究成果・プレスリリース
【プレスリリース】世界最高精度の分解能を持つ中性子イメージング手法開発 ~水素・リチウム・ホウ素を含む製品の精密非破壊検査に期待~
2025.1.27
概要
理化学研究所(理研)開拓研究本部齋藤高エネルギー原子核研究室の齋藤武彦主任研究員、アブドゥル・ムニーム国際プログラム・アソシエイト(研究当時、現光量子工学研究センター中性子ビーム技術開発チーム特別研究員)、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センターの吉田純也准教授らの国際共同研究グループは、1マイクロメートル(µm、1µmは1,000分の1ミリメートル)よりも精細な世界最高精度の分解能を持つ中性子イメージング手法を開発しました。
本研究成果は、X線では可視化が困難だった水素[1]、リチウム[2]、ホウ素[3]を含む製品の精密非破壊検査に貢献すると期待されます。
今回、国際共同研究グループは、高い空間分解能を持つ荷電粒子飛跡検出技術を中性子イメージングに応用し、炭化ホウ素薄膜と蛍光飛跡検出器を組み合わせた中性子検出器を開発しました。この検出器の分解能を定量的に評価したところ、中性子イメージングデバイスの中で世界最高精度でした。
本研究は、科学雑誌『Scientific Reports』オンライン版(1月24日付:日本時間1月24日)に掲載されます。
開発した中性子イメージング手法の模式図
詳細な説明
<研究の背景>
物体を壊さずにその内部を可視化する非破壊検査技術は、現代の工業製品の開発や品質管理に欠かせません。先端的で微細な構造を持つ製品の非破壊検査には、光学顕微鏡に匹敵するマイクロメートルスケールのイメージング分解能が求められています。非破壊検査の代表的な手法がX線透過イメージング(つまりレントゲン撮影)です。しかしこの方法は、物質中の電子によってX線が吸収された影を見るものであり、例えば水素、リチウム、ホウ素といった軽元素の密度コントラストの低い構造を可視化するのは困難です。これらの元素はそれぞれ、水素エネルギー、リチウム二次電池、超伝導ワイヤーといった将来の社会のエネルギーを支える製品に使われており、X線と相補的な非破壊検査の手法が求められています。
そこで注目されているのが中性子ビームです。中性子は陽子とともに原子核を構成する粒子の一つで、電荷がゼロ、単独では10分程度の半減期で壊変するといった特徴があります。中性子を原子核から分離して低速の中性子ビーム[4]を作り、これを物質に照射すると、水素、リチウム6、ホウ素10といった特定の原子核によって比較的よく散乱・吸収されます。この性質を利用して、これらの元素の物体中での空間的分布を透過中性子イメージング[5]で可視化します。
中性子イメージングの精細化にはいくつかの課題がありました。中性子は電荷を持っておらずそのままでは検出が困難なので、中性子を吸収しやすい原子核に吸収させ、その際に放出される荷電粒子(娘核)を検出に用います。このとき、中性子ビームが照射されている環境下ではγ線やβ線といった放射線が発生するので、使用する検出器はこれら放射線のノイズと中性子のシグナルを区別できる必要があります。また中性子ビームは可視光線ほど容易に屈折させたり反射させたりすることができません。そこで中性子イメージングの先行研究では、中性子吸収事象が発生すると光を発するシンチレータの板を用い、その発光点を光学的にレンズで拡大してCMOSカメラで撮影するという手法が用いられました。この方式の中性子イメージングで最も良い空間分解能は約2µmでした。
一方、国際共同研究グループは、先行研究とは異なるアプローチで精細化を狙いました。
そこで注目されているのが中性子ビームです。中性子は陽子とともに原子核を構成する粒子の一つで、電荷がゼロ、単独では10分程度の半減期で壊変するといった特徴があります。中性子を原子核から分離して低速の中性子ビーム[4]を作り、これを物質に照射すると、水素、リチウム6、ホウ素10といった特定の原子核によって比較的よく散乱・吸収されます。この性質を利用して、これらの元素の物体中での空間的分布を透過中性子イメージング[5]で可視化します。
中性子イメージングの精細化にはいくつかの課題がありました。中性子は電荷を持っておらずそのままでは検出が困難なので、中性子を吸収しやすい原子核に吸収させ、その際に放出される荷電粒子(娘核)を検出に用います。このとき、中性子ビームが照射されている環境下ではγ線やβ線といった放射線が発生するので、使用する検出器はこれら放射線のノイズと中性子のシグナルを区別できる必要があります。また中性子ビームは可視光線ほど容易に屈折させたり反射させたりすることができません。そこで中性子イメージングの先行研究では、中性子吸収事象が発生すると光を発するシンチレータの板を用い、その発光点を光学的にレンズで拡大してCMOSカメラで撮影するという手法が用いられました。この方式の中性子イメージングで最も良い空間分解能は約2µmでした。
一方、国際共同研究グループは、先行研究とは異なるアプローチで精細化を狙いました。
<研究内容と成果>
国際共同研究グループは、炭化ホウ素薄膜と蛍光飛跡検出器を組み合わせた中性子イメージングデバイスを開発しました。この手法は、国際共同研究グループが原子核物理学のために培った高精細な荷電粒子飛跡検出技術を、中性子イメージングに応用したものです(図1)。
図1 炭化ホウ素薄膜と蛍光飛跡検出器を組み合わせた中性子イメージングデバイス
左:画面中央で黒く見えるものが炭化ホウ素薄膜で、シリコン基板の表面に形成してある。その上に黄色の四角に見えるものが蛍光飛跡検出器。縦4mm、横8mm、厚さ0.5mm。
右:炭化ホウ素薄膜と蛍光飛跡検出器を密着させてラミネートフィルムに包み、真空パックして作製した中性子イメージングデバイス。中性子ビームはこの写真で奥から手前の方向に照射する。実験後にパックを開封し、蛍光飛跡検出器を共焦点レーザー顕微鏡で読み出す。
この手法の特徴の一つは、中性子から娘核への転換部に炭化ホウ素(B4C)の薄膜を利用したことです。この膜は厚さ230ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)でホウ素10原子核を濃縮してあり、低速中性子を吸収すると「10B+n→7Li+α」の反応によって二つの娘核を放出します。これらは互いに正反対の方向に放出され、検出器に入射したどちらか一方が検出されます。
もう一つの特徴は、蛍光飛跡検出器を利用したことです。今回使用した蛍光飛跡検出器は、アルミナ(Al2O3)を主成分とする単結晶でできており、荷電粒子がその内部を通過すると粒子の通過の痕跡が残ります。これを共焦点レーザー顕微鏡と呼ばれる顕微鏡下で、赤いレーザー光を当てると、荷電粒子が通過した箇所から赤外線が放出されます。この赤外線を読み取ることで飛跡の像が得られます。読み出しに、例えば40倍の倍率の対物レンズを使い、約106µm四方の領域を約1,000画素(ピクセル)の分解能で読み出せば、約0.1µmの空間分解能で飛跡を測定できます。なお、この蛍光飛跡検出器はγ線やβ線といった環境放射線に対する感度は低い一方、娘核の飛跡は一本一本個別に可視化することができます。蛍光飛跡検出器はこれまで荷電粒子検出器として利用されてきましたが、炭化ホウ素の薄膜と組み合わせて中性子イメージングに利用した例は今回が初めてです。
国際共同研究グループは、開発した中性子イメージングデバイスの性能を評価するため、9µmの周期構造を持つガドリニウムの格子[6]を使いました。ガドリニウムには天然元素中で中性子を最もよく吸収するガドリニウム157原子核が含まれており、この元素で作った物体に中性子ビームを当てると高いコントラストで影が生じます。このガドリニウムの格子は入手可能なガドリニウム製の被写体の中で最も微細な構造を持つ物体だったことから、本中性子イメージング手法のイメージング分解能の評価に用いました。実験は茨城県東海村の実験施設J-PARCにある物質・生命科学実験施設で行いました。中性子ビームをガドリニウムの格子に照射し、その隙間を通過してできた縞(しま)状の中性子の模様を、開発した中性イメージングデバイスに記録しました。
図2は、実験に用いた蛍光飛跡検出器を共焦点レーザー顕微鏡下で読み出して得られた画像です。ここでは期待通りにガドリニウム格子によってつくられた周期9µmの縞模様が確認できました。暗い帯状の部分がガドリニウムによって中性子が遮られた部分で、明るい部分が中性子吸収事象から放出された娘核の飛跡が記録されている部分です。
もう一つの特徴は、蛍光飛跡検出器を利用したことです。今回使用した蛍光飛跡検出器は、アルミナ(Al2O3)を主成分とする単結晶でできており、荷電粒子がその内部を通過すると粒子の通過の痕跡が残ります。これを共焦点レーザー顕微鏡と呼ばれる顕微鏡下で、赤いレーザー光を当てると、荷電粒子が通過した箇所から赤外線が放出されます。この赤外線を読み取ることで飛跡の像が得られます。読み出しに、例えば40倍の倍率の対物レンズを使い、約106µm四方の領域を約1,000画素(ピクセル)の分解能で読み出せば、約0.1µmの空間分解能で飛跡を測定できます。なお、この蛍光飛跡検出器はγ線やβ線といった環境放射線に対する感度は低い一方、娘核の飛跡は一本一本個別に可視化することができます。蛍光飛跡検出器はこれまで荷電粒子検出器として利用されてきましたが、炭化ホウ素の薄膜と組み合わせて中性子イメージングに利用した例は今回が初めてです。
国際共同研究グループは、開発した中性子イメージングデバイスの性能を評価するため、9µmの周期構造を持つガドリニウムの格子[6]を使いました。ガドリニウムには天然元素中で中性子を最もよく吸収するガドリニウム157原子核が含まれており、この元素で作った物体に中性子ビームを当てると高いコントラストで影が生じます。このガドリニウムの格子は入手可能なガドリニウム製の被写体の中で最も微細な構造を持つ物体だったことから、本中性子イメージング手法のイメージング分解能の評価に用いました。実験は茨城県東海村の実験施設J-PARCにある物質・生命科学実験施設で行いました。中性子ビームをガドリニウムの格子に照射し、その隙間を通過してできた縞(しま)状の中性子の模様を、開発した中性イメージングデバイスに記録しました。
図2は、実験に用いた蛍光飛跡検出器を共焦点レーザー顕微鏡下で読み出して得られた画像です。ここでは期待通りにガドリニウム格子によってつくられた周期9µmの縞模様が確認できました。暗い帯状の部分がガドリニウムによって中性子が遮られた部分で、明るい部分が中性子吸収事象から放出された娘核の飛跡が記録されている部分です。
図2 共焦点レーザー顕微鏡で撮影した格子の透過中性子イメージ
ガドリニウム格子を透過した中性子ビームの作った縞模様。明るい帯状の部分は中性子吸収事象から放出された娘核の飛跡が記録されている部分で、暗い部分は中性子が遮られた部分。縞模様の周期はガドリニウム格子と同じ9µm。視野のサイズは約106µm四方。照明光は波長640nmの赤い光で、荷電粒子の影響を受けた箇所から放出される750nmの赤外線を検出して画像化した。
国際共同研究グループは、開発した中性子イメージングデバイスの分解能を評価するため、この縞模様の縁の鮮明さを評価しました(図3)。得られた画像の輝度を、縞と平行な方向に射影すると、山と谷が交互に繰り返されるグラフが得られます。画像の明るい部分がグラフの山に、暗い部分が谷に対応します。この山と谷の間の斜面がどれだけ急であるかを定量的に評価することで、得られた画像の鮮明さの指標としました。ここでは、本手法のイメージング分解能を他の手法と比較できるように以下の2通りの指標を用いました。一つ目の指標は輝度が10%から90%に至るまでの距離で、その平均値は2.27±0.02µmと算出されました。二つ目の指標は画像の縁のぼけ方が正規分布的だとしたときの標準偏差に相当する距離で、0.887±0.009µmと算出されました。この値は、これまでに報告されていた最も良い空間分解能である約2µmよりも小さく、本中性子イメージングデバイスの空間分解能が世界最高精度であることが示されました。
図3 縞模様の縁の鮮明さでイメージング分解能の性能を求めた解析
ガドリニウム格子を透過した中性子ビームの縞模様の画像の輝度を、縞と平行な方向に射影し、山と谷が交互に繰り返されるグラフを得る。画像の明るい部分がグラフの山に、暗い部分が谷に対応する。この山と谷の間の斜面がどれだけ急であるかを定量的に評価した。この画像の赤枠で示した場所では、斜面の距離は2.66±0.67µmと算出された。この解析を得られた543組全ての縞に対して行った上で、イメージング分解能を2通りの指標で算出した。一つ目の指標は斜面の10%から90%の高さに至るまでの距離で、その平均値は2.27±0.02µmと算出された。また二つ目の指標は縞の縁のぼけ方が正規分布的だとしたときの標準偏差を表す値で、0.887±0.009µmと算出された。
<今後の期待>
今回の研究で、炭化ホウ素薄膜と蛍光飛跡検出器を組み合わせたデバイスによって、1µmを下回る空間分解能の中性子イメージングが実現できることが明らかになりました。国際共同研究グループは今後、この手法の実用化に向けた研究を進めていきます。具体的には、デバイスの大面積化、顕微鏡による読み出しの高速化、どこまで高密度に飛跡を記録できるかの検出器の応答の評価、飛跡の消去[7]法の確立などです。
本中性子イメージングデバイスは、水素、リチウム、ホウ素といった軽元素を含む製品の精密非破壊検査に応用されることが期待されます。これらの元素は、将来の社会のエネルギーを支える重要な製品に用いられている一方、X線による非破壊検査が困難です。そこで今後の開発によって精細な中性子イメージングが実現すれば、非破壊検査を通じてこれらの製品の開発や改良に貢献できると考えられます。
また理研では、RANS(ランズ)[8]と呼ばれる小型中性子源の開発・運用も行っています。国際共同研究グループは、RANSの研究チームとも連携し、将来的に小型中性子源を用いた中性子イメージングへの応用も見据え、中性子源から画像処理までを包括した中性子イメージング技術の開発を行う予定です。
本中性子イメージングデバイスは、水素、リチウム、ホウ素といった軽元素を含む製品の精密非破壊検査に応用されることが期待されます。これらの元素は、将来の社会のエネルギーを支える重要な製品に用いられている一方、X線による非破壊検査が困難です。そこで今後の開発によって精細な中性子イメージングが実現すれば、非破壊検査を通じてこれらの製品の開発や改良に貢献できると考えられます。
また理研では、RANS(ランズ)[8]と呼ばれる小型中性子源の開発・運用も行っています。国際共同研究グループは、RANSの研究チームとも連携し、将来的に小型中性子源を用いた中性子イメージングへの応用も見据え、中性子源から画像処理までを包括した中性子イメージング技術の開発を行う予定です。
論文情報
<タイトル>
Advancing Neutron Imaging Techniques to Highest Resolution with Fluorescent Nuclear Track Detectors
<著者名>
Abdul Muneem, Junya Yoshida, Takehiko R. Saito, Hiroyuki Ekawa, Masahiro Hino, Katsuya Hirota, Go Ichikawa, Ayumi Kasagi, Masaaki Kitaguchi, Kenji Mishima, Jameel-Un Nabi, and Manami Nakagawa
<雑誌>
Scientific Reports
<DOI>
10.1038/s41598-024-84591-x
Advancing Neutron Imaging Techniques to Highest Resolution with Fluorescent Nuclear Track Detectors
<著者名>
Abdul Muneem, Junya Yoshida, Takehiko R. Saito, Hiroyuki Ekawa, Masahiro Hino, Katsuya Hirota, Go Ichikawa, Ayumi Kasagi, Masaaki Kitaguchi, Kenji Mishima, Jameel-Un Nabi, and Manami Nakagawa
<雑誌>
Scientific Reports
<DOI>
10.1038/s41598-024-84591-x
用語説明
[1] 水素
原子番号1の元素。燃焼させて熱を発生させたり、燃料電池を用いて電気を発生させたり、一時的に余剰になった電気エネルギーの貯蔵に使われたりするなど、将来のエネルギー戦略上の重要な物質として位置付けられている。中性子を散乱しやすい。
原子番号1の元素。燃焼させて熱を発生させたり、燃料電池を用いて電気を発生させたり、一時的に余剰になった電気エネルギーの貯蔵に使われたりするなど、将来のエネルギー戦略上の重要な物質として位置付けられている。中性子を散乱しやすい。
[2] リチウム
原子番号3の元素。携帯電話やノートPCなどの電源として広く普及しているリチウムイオン二次電池に利用されている。天然のリチウム中に約7.5%含まれるリチウム6原子核が中性子を比較的よく吸収する。
原子番号3の元素。携帯電話やノートPCなどの電源として広く普及しているリチウムイオン二次電池に利用されている。天然のリチウム中に約7.5%含まれるリチウム6原子核が中性子を比較的よく吸収する。
[3] ホウ素
原子番号5の元素。39ケルビン(K:絶対温度の単位)という比較的高い温度でも超伝導を示す二ホウ化マグネシウムに使われており、この物質は電力損失のない超伝導ケーブルの素材の候補とされている。天然のホウ素中に約20%含まれるホウ素10原子核が中性子を比較的よく吸収する。
原子番号5の元素。39ケルビン(K:絶対温度の単位)という比較的高い温度でも超伝導を示す二ホウ化マグネシウムに使われており、この物質は電力損失のない超伝導ケーブルの素材の候補とされている。天然のホウ素中に約20%含まれるホウ素10原子核が中性子を比較的よく吸収する。
[4] 低速の中性子ビーム
中性子源から放出される中性子の流れを中性子ビームと呼ぶ。もし中性子源が常温で熱平衡に達している場合、放出される中性子の平均速度は約2,200m毎秒となり、これを熱中性子ビームと呼ぶ。熱中性子ビームを基準として低速の中性子ビームは冷中性子ビーム(平均速度は100m毎秒程度)と呼ぶ。中性子は速度に反比例して原子核に吸収されやすくなるので、透過中性子イメージング([5]参照)には熱・冷中性子ビームを用いるのが効果的である。
中性子源から放出される中性子の流れを中性子ビームと呼ぶ。もし中性子源が常温で熱平衡に達している場合、放出される中性子の平均速度は約2,200m毎秒となり、これを熱中性子ビームと呼ぶ。熱中性子ビームを基準として低速の中性子ビームは冷中性子ビーム(平均速度は100m毎秒程度)と呼ぶ。中性子は速度に反比例して原子核に吸収されやすくなるので、透過中性子イメージング([5]参照)には熱・冷中性子ビームを用いるのが効果的である。
[5] 透過中性子イメージング
物体に中性子ビームを照射し、透過してきた中性子を検出することで、物体内部にある中性子を吸収しやすい物質の分布を非破壊で可視化する手法。
物体に中性子ビームを照射し、透過してきた中性子を検出することで、物体内部にある中性子を吸収しやすい物質の分布を非破壊で可視化する手法。
[6] ガドリニウムの格子
中性子を吸収しやすいガドリニウムを格子状に配置したもので、今回はガドリニウムを約5µmの幅で9µm周期で並べたものを用いている。元は中性子位相イメージングのために開発されたものだが、入手可能なガドリニウム製品の中で最も微細な構造を持つことから、今回のイメージング分解能の評価に利用した。このガドリニウム格子は斜め蒸着法と呼ばれる精密加工によって作製されたが、その形状は完全な長方形ではないので、得られた画像のぼけは検出器のイメージング分解能とともに、ガドリニウム格子の角の鈍りの影響も含まれる。
中性子を吸収しやすいガドリニウムを格子状に配置したもので、今回はガドリニウムを約5µmの幅で9µm周期で並べたものを用いている。元は中性子位相イメージングのために開発されたものだが、入手可能なガドリニウム製品の中で最も微細な構造を持つことから、今回のイメージング分解能の評価に利用した。このガドリニウム格子は斜め蒸着法と呼ばれる精密加工によって作製されたが、その形状は完全な長方形ではないので、得られた画像のぼけは検出器のイメージング分解能とともに、ガドリニウム格子の角の鈍りの影響も含まれる。
[7] 飛跡の消去
本研究で使用した蛍光飛跡検出器は、紫外線レーザーを照射することで飛跡を消去し再利用ができる。国際共同研究グループは独自の紫外線レーザー照射システムを構築し、α線飛跡を100µm四方に1万本の高密度で記録した状態でも紫外線レーザーによって飛跡が消去できること、飛跡と消去のサイクルを少なくとも7回繰り返しても検出器が再利用できることを実証した注)。
本研究で使用した蛍光飛跡検出器は、紫外線レーザーを照射することで飛跡を消去し再利用ができる。国際共同研究グループは独自の紫外線レーザー照射システムを構築し、α線飛跡を100µm四方に1万本の高密度で記録した状態でも紫外線レーザーによって飛跡が消去できること、飛跡と消去のサイクルを少なくとも7回繰り返しても検出器が再利用できることを実証した注)。
[8] RANS(ランズ)
理研で開発された小型中性子源システム。加速器によって加速した陽子線を標的に照射し、原子核を破砕することで中性子ビームを生成する。RANSはRIKEN accelerator-driven compact neutron systemsの略。
理研で開発された小型中性子源システム。加速器によって加速した陽子線を標的に照射し、原子核を破砕することで中性子ビームを生成する。RANSはRIKEN accelerator-driven compact neutron systemsの略。
注)Abdul Muneem, Junya Yoshida, Hiroyuki Ekawa, Masahiro Hino, Katsuya Hirota, Go Ichikawa, Ayumi Kasagi, Masaaki Kitaguchi, Satoshi Kodaira, Kenji Mishima, Jameel-Un Nabi, Manami Nakagawa, Michio Sakashita, Norihito Saito, Takehiko R. Saito, Satoshi Wada, Nakahiro Yasuda,Study on the reusability of fluorescent nuclear track detectors using optical bleaching,Radiation Measurements,Volume 158,2022
国際共同研究グループ
理化学研究所 開拓研究本部 齋藤高エネルギー原子核研究室
基礎科学特別研究員(研究当時、現 特別研究員)
江川弘行(エカワ・ヒロユキ)
大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時、現 客員研究員)
笠置 歩(カサギ・アユミ)
主任研究員
基礎科学特別研究員(研究当時、現 特別研究員)
江川弘行(エカワ・ヒロユキ)
大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時、現 客員研究員)
笠置 歩(カサギ・アユミ)
主任研究員
齋藤武彦(サイトウ・タケヒコ)
基礎科学特別研究員(研究当時)
基礎科学特別研究員(研究当時)
中川真菜美(ナカガワ・マナミ)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時)
アブドゥル・ムニーム(Abdul Muneem)
(現 光量子工学研究センター 中性子ビーム技術開発チーム 特別研究員)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時)
アブドゥル・ムニーム(Abdul Muneem)
(現 光量子工学研究センター 中性子ビーム技術開発チーム 特別研究員)
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
准教授 吉田純也(ヨシダ・ジュンヤ)
(東北大学 大学院理学研究科 助教(研究当時)、
理研 開拓研究本部 齋藤高エネルギー原子核研究室 客員研究員(研究当時))
准教授 吉田純也(ヨシダ・ジュンヤ)
(東北大学 大学院理学研究科 助教(研究当時)、
理研 開拓研究本部 齋藤高エネルギー原子核研究室 客員研究員(研究当時))
京都大学 複合原子力科学研究所
教授 日野正裕(ヒノ・マサヒロ)
教授 日野正裕(ヒノ・マサヒロ)
高エネルギー加速器研究機構
外部連携推進部
特任上席URA 広田克也(ヒロタ・カツヤ)
物質構造科学研究所
研究員 市川 豪(イチカワ・ゴウ)
特別准教授(研究当時) 三島賢二(ミシマ・ケンジ)
外部連携推進部
特任上席URA 広田克也(ヒロタ・カツヤ)
物質構造科学研究所
研究員 市川 豪(イチカワ・ゴウ)
特別准教授(研究当時) 三島賢二(ミシマ・ケンジ)
名古屋大学 大学院理学研究科・名古屋大学 現象解析研究センター
准教授 北口雅暁(キタグチ・マサアキ)
准教授 北口雅暁(キタグチ・マサアキ)
University of Wah(パキスタン)
教授 ジャミールアン・ナビ(Jameel-Un Nabi)
教授 ジャミールアン・ナビ(Jameel-Un Nabi)
研究支援
本研究グループのメンバーである吉田准教授は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)「ストレンジ・ハドロンクラスターで探る物質の階層構造(研究代表者:田村裕和)」の助成を受けました。
関連リンク
問い合わせ先
【研究に関すること】
理化学研究所 開拓研究本部 齋藤高エネルギー原子核研究室
主任研究員 齋藤武彦(サイトウ・タケヒコ)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時) アブドゥル・ムニーム(Abdul Muneem)
(現 光量子工学研究センター 中性子ビーム技術開発チーム 特別研究員)
主任研究員 齋藤武彦(サイトウ・タケヒコ)
国際プログラム・アソシエイト(研究当時) アブドゥル・ムニーム(Abdul Muneem)
(現 光量子工学研究センター 中性子ビーム技術開発チーム 特別研究員)
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
准教授 吉田純也(ヨシダ・ジュンヤ)
E-mail: junya.yoshida.e5*tohoku.ac.jp
TEL: 022-752-2342
准教授 吉田純也(ヨシダ・ジュンヤ)
E-mail: junya.yoshida.e5*tohoku.ac.jp
TEL: 022-752-2342
【報道に関すること】
理化学研究所 広報室 報道担当
Tel: 050-3495-0247
Email: ex-press * ml.riken.jp
Tel: 050-3495-0247
Email: ex-press * ml.riken.jp
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 総務係
〒980-8572 仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
E-mail: sris-soumu*grp.tohoku.ac.jp
TEL: 022-752-2331
〒980-8572 仙台市青葉区荒巻字青葉468-1
E-mail: sris-soumu*grp.tohoku.ac.jp
TEL: 022-752-2331
※E-mailは*を@に置き換えてください。
お問い合わせ
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター
〒980-8572 仙台市青葉区荒巻字青葉468−1